Otomi のデジスコ研究室 by 冨田
第3回 デジスコとビデスコ
過去2回はデジタルカメラのトレンドについてレポートしました。今回は私の今年の研究テーマのひとつである「デジスコで動画!」に関連してデジスコとビデスコのハードウェアについて比較してみました。
・背景
デジスコでの動画についてはデジスコ通信 第29号(2006年05月12日号)の特集「デジスコで動画を楽しもう!」において、デジスコによる動画の楽しみ方を紹介しました。
・デジスコで動画を撮ってみよう……by
冨田
・デジスコ動画に向いたデジタルカメラは?……by
冨田
・撮影した動画をWeb用に編集してみよう……
by katsu
ビデスコはコンパクトデジタルカメラの代わりにビデオカメラを接続して、主に動画を撮影するためのシステムです。
その概要は「コーワ デジスコワールド」の「始めよう超望遠ビデオ撮影」のコーナーで詳しく解説されていますので、ここであらためて述べません。
今回は上記の解説記事を読んだときにちょっと読者が疑問を持ちそうな部分を解説してみます。
・ビデスコの使用機材
デジスコシステムとビデスコシステムの大きな違いは(1)フォト&ビデオアダプター、(2)ユニバーサルマウントTSN-DA3、(3)大型三脚とビデオ雲台の3点です。
(1)フォト&ビデオアダプター
ビデオカメラは大抵10倍以上の高倍率ズームレンズを搭載しています。
デジスコで使用する20倍以上のアイピースとの組み合わせでは、ケラレが多くて実用にならないことがほとんどです。これは、カメラの光学系の長さに対して、アイピースのアイレリーフが短いことが原因です。これを回避するためにはアイレリーフの長いアイピースを組み合わせる必要があります。また、カメラ側のズーム倍率が大きいので、アイピース側の倍率は低く抑えたほうが、扱いやすいシステムになります。
例えばコーワのフォト&ビデオアダプターTSN-VA1はTSN-604,665との組み合わせで8倍、TSN-824で8.7倍です。ケラレがなく実用になる焦点距離の範囲は35mm換算で1000mm〜3000mmになっています。この焦点距離は30倍アイピースと3倍ズームのコンパクトデジタルカメラを組み合わせたデジスコと同等です。
なお、TSN-VA1の重量は335g、デジスコ用アイピースよりも100g程度重くなっています。

ビデスコ用のアイピースの特徴は低倍率であることから被写界深度が広く、オートフォーカスの合う範囲が非常に広くなります。
このため、被写体との距離が変化してもスコープのピント調整をしなくてもAFがあってしまいます。これはとても便利な反面、背景など被写体以外にもピントが合いやすくなる面もあるので、過信は禁物です。なかなか被写体にピントが合わない場合は、マニュアルフォーカスに切り替えましょう。ビデオカメラは液晶モニタが大きいのでスコープでのピント調整はわかりやすいです。
(2)ユニバーサルマウントTSN-DA3
デジスコではユニバーサルマウントを使用するように薦められています。その理由を考えてみましょう。
デジスコ用コンパクトデジタルカメラとビデオカメラの重量を比較してみましょう
・ニコンクールピクスP1+BR-P1アダプター+照準器 → 約470g

・ハイビジョンビデオカメラ、ソニーHDR-HC3は約600g(標準バッテリ使用時)〜650g(大型バッテリー使用時)。
・DVテープ式ビデオカメラ、パナソニックGS300は使用時約540g(標準バッテリー使用時)。DVD式のD300は同約647g(同)。
合計重量で比較と100〜200gの違いです。一見、ビデオカメラもフィルターアダプターで直接繋ぐだけでいいのではないか?と思われるかもしれません。
しかし、デジスコ専用アダプターは初めからカメラや照準器を装着することを前提にした強度設計です。フィルターネジの付いたソニーWシリーズのフィルター部はカメラ自体が軽量なので照準器(約130g)を追加しても十分な強度です。
それに対し、ビデオカメラのフィルター部は、せいいぜい重さ200g程度のワイドコンバータレンズやテレコンバーターレンズを装着することを前提とした構造です。つまり、自身の重量を支えるだけの強度は想定していないのです。また、撮影時間の延長のため大型バッテリーを使用すると重量が増加するだけでなく、重心がより後方にずれ、フィルター部への負荷がさらに大きくなります。物理的に繋ぐことは可能ですが、フィルター部が破損してカメラが脱落する危険性が高いのです。

このため、ビデスコではカメラ自身を支えるユニバーサルマウントコーワ・TSN-DA3(1170g)の併用が「必須」になるのです。
なお、ニコンからも同様の製品としてニコン・ユニバーサルブラケットUBK(980g)があります。
両製品とも全メーカーのフィールドスコープで使用可能です。
(3)大型三脚とビデオ雲台
ビデスコでは(2)のユニバーサルマウントを使用することからデジスコシステムよりも約1kg、加えて、使用するアイピース、ビデオカメラとデジタルカメラの重量差から約1.3〜1.5kg程度重くなってしまいます。このためシステムを支える足回りは同口径のデジスコシステムよりも1クラス上の口径のスコープ用の足回り(三脚+ビデオ雲台)が必要になります。
例えば、口径60mmクラスのスコープとデジタルカメラを含めると1.3〜1.5kgになりますが、ビデスコになると約2倍の2.6〜3kg前後になります。この重量を支えるには口径80mmクラスに対応した足回り(例:三脚ジッツオG1228+雲台G2380)が必要になり、合計重量は6kg前後になります。80mmクラスのスコープなら7kgを超える場合もあります。
このような理由でビデスコは大きく、重いシステムになってしまうのです。
・提案:手軽にビデスコを楽しむために
「デジスコで動画!」を研究するには対極にある「ビデスコ」を経験しなければ片手落ちですので、私も「ビデスコ」挑戦することにしました。
しかし、先に述べたように「ビデスコは大きくて重い」というイメージがあります。
そこで私は「ビデスコは大きくて重い」というイメージを壊すことを考えてみました。
ポイントは「小型軽量なビデオカメラ」を選択すること。
ビデオカメラを軽くする手っ取り早い方法は、記録メディア&駆動メカを小型軽量にすること。
記録テープを小型のデジタルビデオテープや8cmDVDにすることで現行の機種は500〜600g台に軽量化されていますが、まだまだ重いと言わざるを得ません。
そこで注目したのがHDDやSDメモリカードを使用するタイプです。
その中から私はSDカードムービーのパナソニック SDR-S100を選択しました。(後継機としてSDR-S200が発表されましたが仕様はほぼ同じです)
このビデオカメラはDVテープやDVDをメディアにした姉妹機と同じ、3CCDの光学系を採用しており、画質には手抜きがありません。
記録メディアに機械的な駆動部を持たないSDメモリカードを使用することにより、大幅な小型化と軽量化を達成しています。
このビデオカメラでビデスコシステムを組むことにしました。
パナソニックSDR-S100≒280g、TSN-VA1=335gの合計で615g。カメラ自体が軽量なのでユニバーサルアダプターで支える必要はありません。照準器は雲台部に追加して軽量なTSN-604との組み合わせで合計1.5kgに収まっています。これは一般的なデジスコとほぼ同等の重量です。
これに組み合わせる足回りは三脚ジッツオG1228+雲台G2380を選択しました。これで合計重量約4.5kgです。
耐加重で考えれば一クラス下のジッツオG1127+ベルボンFHD-51Qなどの組み合わせでも可能だと思いますが、ブレ対策のためにはやはり1クラス上の足回りを選択したいです。
このシステムの注意点は2つ。
・SDメモリカードへはMPEG2形式で記録されます。ただし、ファイル形式が独自仕様で、16:9の動画の扱いには付属ソフトが必要です。
・撮影時、オートモードでは露出オーバーになりやすいようです。
その場合は、マニュアルモードに切り替えてシャッター速度とゲイン調整で明るさをコントロールする必要があります。(カルガモの例)
これら点を理解しておけば、気軽に楽しめるビデスコシステムです。撮影操作は付属のリモコンでOK。→ 関連情報と作例はこちらにまとめました
「デジスコで動画!」のテーマは「ビデスコ」も含めてその楽しみ方を研究していきます。