希望小売価格(税込)¥236,250
対物レンズ有効径 85mm
全長:379mm   重量:2030g
 
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2009年5月22日、株式会社ニコンビジョンから新型スコープ『EDG(エッジ)フィールドスコープ』と命名された新製品が85mmと65mmの2種類で同時に発売されました。
株式会社ニコンビジョンは野鳥観察、撮影用途のフィールドスコープでも業界のトップブランドである『フィールドスコープED』シリーズを有し、ED82、EDV、ED50とユーザーの目的にあった口径別のスコープと豊富なオプションで人気となっております。
今回、新たに発売となったEDG(エッジ)のコンセプトはニュースリリースによると『高性能な上位機種のフィールドスコープを求めるユーザーの要望に応えて開発したフラッグシップモデルです。デジタルイメージングシステムへの対応も充実させて、広く写真愛好家にもご愛用いただけます。「EDG」は、英語で「最先端」を意味する「cutting EDGe」からの命名で、ニコンビジョンの望遠鏡・双眼鏡製品のフラッグシップモデルの名称です。』といった発表からニコンの意気込みを感じられます。

今回、使用機種はEDGフラッグシップの大口径モデルEDG(エッジ)85を色々な観点からレポートして参ります。
徹底的に拘り抜いた新たな光学設計
 
対物レンズには85mmEDレンズを使用し今回プリズム部にはダハプリズムを採用、ダハ面には位相差補正コートで高コントラストを確保。ストレートタイプの補助プリズムには全反射をしない高反射誘電体多層膜ミラーを施しコントラストがしっかり出て明るく自然な見え味を実現。ニコンの最新光学技術を惜しみなく使い各部に徹底した拘りを施しておりフラッグシップに相応しい見え味となっております。
新方式、リニア式ドラムフォーカスリング
 
従来のフィールドスコープシリーズを同じくフォーカス方式はドラム式となっており従来のニコンスコープや一眼レフカメラを持っている人にはすんなりと受け入れられるデザインです。リングの回転数は4分の3回転、最短から無限遠まで素早く操作が可能です。発売前のデモ機では鏡筒の太さも相まってかドラムリングが少々重く感じられ撮影での使用に疑問を持ちましたが実際の製品版では私が思っていたよりも軽くなっており試写での使用でも問題はありませんでした。しかし、従来モデルED82よりは確実に重くなっており、好みが非常に分かれそうな所ではあります。敢えて苦言を出すとすればドラムリングの位置が少し遠いので腕が伸びた状態になるのが辛いです。
カメラレンズを意識した高剛性マグネシウムボディ
 
EDG(エッジ)ではデザインも一新され、デジタル一眼レフカメラのレンズを想像させるデザインになりました。また、光学系の見直しにより軽量化と剛性UPを図る為、材質もマグネシウム合金に変更。高級感のある外観はフィールドでの注目度もピカイチで満足感に浸れます
ネジ式から進化したバヨネット接合方式
 
デジスコシステムを使用した際、ネジ式では多少のたわみやヨレが出る場合があります。ユーザーの不満点であった接合方式をバヨネット方式にしガッチリと接眼レンズを保持する事ができようになりました。注目すべき点は、バヨネットが50年の伝統を誇るニコンFマウントを採用している事です。拡張性の高いFマウントにより今後の展開に期待が持てます。
しっかりと保持が可能な三脚マウント
 
光学設計の見直しにより全長が長く、重量増になっているが三脚座はそのデメリットを見事にカバーできる設計になっています。重量バランスをしっかり整えられるように写真のように3つの三脚穴が存在しています。これにより自由度が増し大きく堅牢なボディをしっかりと支える事が可能となっています。更に、3つのネジ穴を利用し2点及び3点止めをすれば回転防止効果にも期待がもてます。
デジスコ撮影を最重要視した利便性の高いアイピース群
 
今回は、ニコンが得意とするトータルシステムの構築において重要な部分であるアイピースも全てフルモデルチェンジ!何と全7種類のアイピースが新発売されました。注目なのが単焦点のアイピースの豊富さです。従来のあったDS接眼レンズの倍率は網羅し更に広角20倍、ロングアイレリーフ25倍、標準倍率38倍が新発売されました。更に30倍の接眼レンズをロングアイレリーフに仕様変更し今後のデジタルカメラにも対応が期待できるラインナップとなっております。
互換性に優れたカメラ接続部
 
アイピース群は従来のデジスコーピング思想を受け継ぎニコン製のカメラブラケットFSBシリーズやデジスコドットコム製高精度カプラーTAシリーズ、VCAシリーズに完全互換しており今までのシステムを崩す事なく使用する事ができます。また、オプションパーツであるマウント変換アダプターEMA-1を使用すれば従来のMC接眼レンズ、DS接眼レンズに加えデジスコドットコム製ターボアダプター接眼レンズも使用可能となっています。
アイピースの防水加工による安心設計
 
このアイピース群はかなり高級なものと位置付けて間違い無さそうです。バヨネット部近辺にはOリングを配し接合部には水が浸入してこないような配慮がなされています。防滴加工がしっかり施されているので急な天候変化にも耐えられるようになっています。
一体化されたゴム見口
 
驚かされたのはこのゴム見口の部分。25倍、30倍、20-60のズームアイピースでは交換式になっています。20倍、38倍、50倍、75倍ではレンズ周辺のゴム部分を反時計回りに回すと覗き口のレンズ周辺からゴム見口がせり出して来るといった配慮がなされており肉眼の観察目的でも適切な距離で観察ができるようになっております。また、ニコン製ユニバーサルブラケットFSB-U1等を使用した場合にもこのゴム見口を使う事で無駄な入射光を防ぐ事もできます。
今後の展望
 
同時発売されたアイピース群にはなかったが今後はニコンデジタル一眼レフカメラ用のカメラアタッチメント等も発売されると予想されます。すでに試作品もPIE2009やTBF2009でも展示されていたので発売もそう遠い未来ではないでしょう。このEDGの方向性が撮影用としているのであれば、K社のようなアイレリーフ100mm超のビデオフォトアダプター等も発売して欲しい所です。
製品の位置付け
 
この2機種の発売によりニコンのラインナップはED50/EDV/ED82/EDG65/EDG85の5種類となります。はじめてみようと考えている一般的なデジスコファンにはEDV/EDG65がオススメです。EDG85は被写界深度がかなり浅い、しかしながらボケ味、色合い、明るさにおいては最高の結果が得られます。どちらかに分別しようと考えるとEDG85は上級者向けのスコープであると言わざるをえません。成功率が低いというのは認めざるを得ませんが結果が出た時の満足感というのは60mm径のスコープでは得られないものがあります。作品レベルの画像を求められる方には間違いなくオススメのスコープです
注意が必要な点は本体重量が重い事です。EDG85は重量が2.03kgと現行スコープでは一番のヘビーウェイトです。それに耐えうるだけの結果は残せるスコープですが、やはり自分の体力や撮影スタイルに合わせ選ぶことが選定ポイントです。
価格
 
EDGシリーズはニコン最高のスコープと言っても過言ではありません。値段帯でのライバルはKOWA TSN-884、SWAROVSKI STM80HDとライバル達も強豪ぞろいです。では、この強豪達と勝負できる点はどこになるのか考察してみると撮影倍率の自由度というのが真っ先に思い浮かんできます。全てのアイピースを一気に揃えるには大変コストも掛かってしまいますが、長い目で見て一眼レフカメラの交換レンズのように買い足して行くと良いと思います。デジスコ撮影性能まで加えると評価が個人個人で変わってくると思いますのでここにはあえて触れないでおこうと思います。被写界深度が浅く初心者でピント合わせなど操作面に熟練が不足であったり、乱視や老眼など眼に不安のある方には難しいスコープではあると思います。前述のライバルたちに比べコスト面では多少リーズナブルですが、『高価』である事は間違いありません。それでも、チャレンジする価値はあるスコープだと思いますので、上級者だけではなく初級者の方にも是非チャレンジをして頂きたいスコープです。
後日UP予定お待ち下さい。
EDGシリーズと初対面はPIE2009。その後、デジスコ写真展やTBF2009で触れる機会がありましたがどうにも良い印象が持てませんでした。デザインは秀逸で本当にかっこいい!!のですが・・・その後、重い、長いと言葉が続いてしまう…操作感も正直ドラムが重く、位置が遠いと散々だった為製品版を触れるまでは本当に大丈夫なのかなぁっと不安で仕方なかったのです。しかし、インプレッションの担当になり製品版を手にした時にそういった不安が全て思い込みだったと気付かされました。細かい部分ではあるが改善はされていたからです。ピントリングは思ったより軽くなっており、気のせいだったのかと思った位初見の印象がなくなりました。今回このレポートを作成する際に行ったテスト撮影でもピントリングが遠い点だけ除けば従来のEDシリーズと同じ使い方ができました。
 
1.移動、撮影時のEDGシステムの重量と長さ
最も気になるEDGの難点である2.03kgという本体重量…被写体を求めて動き回られる方には、この重さは非常に負担になります。私も良く動き回って被写体を探しますので、EDGでシステムを組んだ時デジスコらしからぬ重さだなぁっと苦笑いしてしまいました。デジスコの中では一番重いですが、フィールドで回りを見ればそれより重い機材担いで走り回っていらっしゃる方もいますので『重さ』はご自分の体力と応相談という所ですね。(私は坂道は辛かったですが、全然平気でした。)
全長の長さは移動時はさほど気にならないですが、問題は撮影時に起きました。撮影時に重量と長さのせいか左右に振られる傾向がありますので撮影時しっかりと雲台を固定するか半固定状態にすると撮影はしやすいと思います。ユーザーとしての一意見をいいますと、ヒップサポートパーツでもう一点支えを作れば振られやブレなどを大きく抑制できるのではないかと感じました。元々の三脚座もしっかりとした物になっており2点止めする事で効力もあるのですが、今後のEDGに対応したヒップサポートの開発を待ちたい所です。
 
2.撮影時の感想
元々大口径=ピント合わせがシビアというのはデジスコ撮影者の間では常識のように言われていました。EDGも通説通り、その被写界深度の浅さで大いに私を悩ませてくれました。(笑)比較的デジタルカメラのズームワイド側の撮影では、感覚的に難しいと感じませんでしたが、ズームを少し掛けるとまるでじゃじゃ馬のようにピントが暴れます。しかし、ピントが合った時には驚くべき結果を残してくれるので、これがまたチャレンジ精神煽ってくれるのです。気になる色味、画質の部分ではED82以上の素晴らしい結果を残してくれます。若干マゼンタ系がかかる傾向はありますが、気になるレベルではありません。ドラムリングも一回転しない間に最短〜無限遠まで操作できますので意外に早く眼にピントを合わせる事ができます。感じていたドラムリングの固さもピントの微調整時の微妙なタッチをしっかり捉えてくれていて心地よいピント合わせが可能です。結論から言うと、やはり難しいスコープであると私は言ってしまいます。しかし、出てくる画質を見てしまうと、どうにもスルメイカのように噛めば噛むほど味が伝わってくるような不思議な魅力を持ったスコープです。『今度は20倍で撮ってみたいなぁ』とか『こうすればいいかも?』というムラムラした欲求が沸いてきます。

上級者にはデジスコを初めて使った頃のワクワクした高揚感を思い出させ初心者にはチャレンジ精神を大いに盛り上げてくれる事間違いなしです!
 
3.作例
   

作例撮影機材
スコープ Nikon EDG 85
アイピース Nikon FEP-38W
撮影キット BR-P6000CS
カメラ Nikon COOLPIX P6000

作例撮影機材
スコープ Nikon EDG 85
アイピース Nikon FEP-38W
撮影キット BR-P6000CS
カメラ Nikon COOLPIX P6000
   

作例撮影機材
スコープ Nikon EDG 85
アイピース Nikon FEP-38W
撮影キット BR-P6000CS
カメラ Nikon COOLPIX P6000

作例撮影機材
スコープ Nikon EDG 85
アイピース Nikon FEP-38W
撮影キット BR-P6000CS
カメラ Nikon COOLPIX P6000
周囲の期待の高さもあり、EDGに対する評価と言うのは非常に厳しく厳正に行いました。
しかし、EDGはその厳しいハードルを難なくヒョイっと飛び越えてくれるのです。まるでテストしている自分が恥ずかしくなってきてしまう位、威風堂々とされるのでたまったものではありません。
『私はこれから王様になるんです。』そういう幻聴が聞こえてきそうなのです。
EDGシリーズの参入でよりスコープ選びの選択肢が増し悩みも倍増する事だと思います。アクセサリーの豊富さ、従来シリーズとの互換性、画質、デザイン、まさに『フラッグシップ』の称号に相応しいスコープです。
競合他社には負けないスペックと他社にはない独自性をもったシステムは多くのユーザーに高い満足感を与えてくれるだろうと思います。

■ 株式会社ニコンビジョン http://www.nikonvision.co.jp/
■ 株式会社デジスコドットコム http://www.turboadapter.com/

2009年6月18日 DIGISCO.COM 楠元(くすもと)